医院長・事務長向け:電子カルテ情報共有サービスと3文書6情報
本記事では、電子カルテ情報共有サービス、3文書6情報、HL7 FHIRについて、クリニックの医院長・事務長向けに整理します。今使っている電子カルテが情報共有に対応できるか、ベンダーに何を確認すべきか、窓口運用や患者同意まで実務目線で解説します。
「3文書6情報」「HL7 FHIR」——医療DXの話題に必ず出てくるキーワードですが、わかりやすく説明されることはあまりありません。 でも、これらを知らないと「うちの電子カルテで本当に大丈夫か」の判断ができません。 今回は、この3つのキーワードを徹底的にやさしく解説します。
難しそうな名前ですが、仕組みはとてもシンプルです。一緒に見ていきましょう。
電子カルテ情報共有サービスとは?
全国の医療情報をつなぐ「医療版SNS」のようなプラットフォーム
「電子カルテ情報共有サービス」とは、全国の医療機関・薬局などが、患者さんの電子カルテ情報を共有するための仕組みです。 厚生労働省が整備を進めており、全国医療情報プラットフォームの中核をなします。
友達に大事な情報を伝えたいとき、今は紙の手紙を書いて郵送するより、LINEやメールを使いますよね。 すぐ届く、相手も読みやすい、記録も残る——だから便利です。
医療機関間の情報伝達も同じです。 今まで「紹介状(手紙)を印刷して、封筒に入れて、患者さんに持たせる」という方法をとっていました。 電子カルテ情報共有サービスは、これをデータのやりとりに変えることを目指しています。
紙の紹介状・退院サマリーを患者さんが持参。情報が不完全・遅延のリスクがある
必要な医療情報をデータで安全に共有。患者さんの同意のもと、必要な場所で閲覧できる
「3文書6情報」とは?——何を共有するかのルール
電子カルテ情報共有で対象となる「9種類の医療情報」
電子カルテ情報共有サービスで共有する情報は、「3文書6情報」と呼ばれる9種類です。
📄 3文書(3つの書類)
医師が他の医療機関に患者さんを紹介するときの書類
入院中の治療経過・退院時の状況をまとめた書類
健康診断・人間ドックの結果をまとめた書類
📊 6情報(6つのデータ項目)
患者さんが病院をまたいで受診するとき、「前の病院でどんな薬を飲んでいたか」「アレルギーは何があるか」「どんな病気を持っているか」——この情報がないと、安全な医療を提供できません。
この9種類(3文書6情報)は、医療機関間で最低限共有すべき、患者安全に直結する情報です。 だから、電子カルテ情報共有サービスでまずこの9種類を対象としています。
「HL7 FHIR」とは?——医療情報の「共通語」
難しい名前だけど、仕組みはシンプル。「情報をどう書くかのルール」
「HL7 FHIR(エイチエル7ファイア)」——この名前だけを見ると難しそうですが、意味はシンプルです。
FHIRは「Fast Healthcare Interoperability Resources(医療情報の高速な相互運用のための標準仕様)」の略で、医療情報をどのような形式で記録・交換するかを定めた、国際的な標準規格です。
就職活動で履歴書を書くとき、会社ごとに「氏名を3行目に書いてください」「学歴は西暦で書いてください」「趣味欄はありません」とバラバラなフォーマットを要求されたら大変ですよね。
だから、ほとんどの履歴書には「JIS規格」という共通フォーマットがあります。 誰でも同じフォーマットで書けば、どの会社でも読める。
HL7 FHIRは、医療情報の「JIS規格」のようなもの。どの電子カルテで作った情報も、FHIRというフォーマットで書けば、どのシステムでも読めるようになります。
| HL7 FHIRの特徴 | 医療機関への意味 |
|---|---|
| 世界標準の規格 | 日本だけでなく世界と医療情報をやりとりできる将来性 |
| Web技術(APIベース) | インターネットと親和性が高く、システム連携がしやすい |
| 厚労省が採択・推奨 | 診療情報提供書・退院時サマリー等でFHIR仕様が標準に |
| 機械が読める形式 | AIや自動化システムとの連携が可能になる |
| 拡張性が高い | 新しい情報の種類にも対応しやすい |
医院への影響——「電子カルテ対応」だけじゃ足りない
「FHIRに対応しているか」がこれからの電子カルテ選びの核心になる
「うちはもう電子カルテを使っているから大丈夫」とお思いの方へ——実は、電子カルテを「使っている」だけでは不十分になってきています。
今の電子カルテで確認すること
「電子カルテ情報共有サービス」への接続対応予定があるか。「3文書6情報」のデータ出力に対応しているか。HL7 FHIR記述仕様への対応ロードマップがあるか。
ベンダーに聞くべきこと
「御社の電子カルテは電子カルテ情報共有サービスに対応しますか?」「HL7 FHIRへの対応スケジュールはどうなっていますか?」と具体的に確認する。
| 確認ポイント | 対応している場合 | 対応していない場合 |
|---|---|---|
| 電子カルテ情報共有サービス接続 | 3文書6情報を自動でデータ化・共有できる | 手作業での対応が続く。将来的に更新が必要 |
| HL7 FHIR対応 | 他の医療機関・薬局・介護事業所とスムーズに連携できる | 情報連携の際に「翻訳作業」が発生し続ける |
| 3文書6情報の出力 | 診療情報提供書・退院サマリー等のデータ化が可能 | 引き続き紙ベースでの対応が必要になる |
「同意」の仕組み——患者さんの権利も守られる
医療情報の共有は「患者さんの同意」があってこそ
電子カルテ情報共有サービスでは、患者さんの医療情報を共有します。 ここで大切なのが、「患者さんの同意」の仕組みです。
医院の窓口対応も変わる
電子カルテ情報共有サービスが普及すると、受付時に「情報の共有についての同意確認」が必要になる場面が増えます。 スタッフが正確に説明できるよう、医院内の教育・マニュアル整備も重要です。
まとめ——3つのキーワードのつながり
電子カルテ情報共有・3文書6情報・HL7 FHIRは、一体となった仕組み
情報をつなぐプラットフォーム
紹介状・退院サマリー・健診報告
傷病名・アレルギー・禁忌・感染症・検査・処方
医療情報の共通語・世界標準規格
情報共有の大前提
今すぐ対応状況を確認
この3つのキーワードは、それぞれ独立したものではなく、一体となった仕組みです。 「電子カルテ情報共有サービス(プラットフォーム)」で「3文書6情報(何を共有するか)」を「HL7 FHIR(どう書くか)」の形式でやりとりする——これが全国の医療情報共有の基本設計です。
- 自院の電子カルテがHL7 FHIRに対応しているか(または対応予定があるか)を確認する
- 電子カルテ情報共有サービスへの接続スケジュールをベンダーに確認する
- 3文書(診療情報提供書・退院時サマリー・健康診断結果報告書)の作成をデータ化する準備を検討する
- 6情報(傷病名・アレルギー等)を電子カルテに正確に入力する運用を整える
- 窓口スタッフへの「情報共有の同意確認」に関する研修・マニュアルを整備する
次回・第7回では、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版」を取り上げます。 医療DXが進む中で、どうサイバーセキュリティを守るかをやさしく解説します。
医院長・事務長向けFAQ
Q. 電子カルテ情報共有サービスとは何ですか?
電子カルテ情報共有サービスとは、医療機関や薬局などが、患者の同意のもとで3文書6情報などの医療情報を共有するための仕組みです。全国医療情報プラットフォームの重要な構成要素です。
Q. 3文書6情報とは何ですか?
3文書は診療情報提供書、退院時サマリー、健康診断結果報告書です。6情報は傷病名、アレルギー情報、薬剤禁忌情報、感染症情報、検査情報、処方情報を指します。
Q. HL7 FHIRとは何ですか?
HL7 FHIRは、医療情報をシステム間で交換するための国際標準規格です。電子カルテ情報共有や標準電子カルテ対応を考えるうえで重要な確認項目です。
電子カルテの「情報共有対応」、一緒に確認しませんか?
365メディカルでは、HL7 FHIR対応・電子カルテ情報共有サービスへの準備状況の確認・ベンダーとの対話サポートを行っています。 「何から確認すればよいかわからない」という段階からお気軽にご相談ください。
365メディカルに相談する参考・参照
- 厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス」関連資料
- 厚生労働省「HL7 FHIR記述仕様(厚労省標準規格)」
- 厚生労働省「全国医療情報プラットフォームについて」
- 厚生労働省「医療DX令和ビジョン2030」
本記事は、医療機関向けに制度やガイドラインの全体像をわかりやすく整理することを目的とした一般的な情報提供です。実際のシステム選定・届出については、必ず最新の厚生労働省資料・ベンダーへの確認・専門家の助言等をご確認ください。