公開日:2026年6月16日 | 一般社団法人 365メディカル
令和8年(2026年)4月1日、改正医療法が施行されました。この改正により、オンライン診療はこれまでの「例外的な運用」から、法律に明文化された「正式な制度」へと大きく転換しました。医療機関の関係者はもちろん、オンライン診療に関わるビジネスを検討している事業者にとっても見逃せない重要な変化です。本記事では、改正の核心である5つの重要ポイントをわかりやすく解説します。
改正内容に入る前に、まず「法制化」という言葉の意味を整理しておきましょう。「法制化」とは「合法化」ではありません。オンライン診療はこれまでも違法ではありませんでした。では何が変わったのか——それは根拠となるルールの「格」が上がったということです。
省令に格上げされたことで、違反に対して行政が是正命令・業務停止・施設の閉鎖命令を下せるようになりました。さらに、届出義務に違反した者や是正命令に従わない者には、罰金(20万円以下等)や拘禁刑といった刑事罰も適用される場合があります。つまり「法制化」とは、「ルールの実効性が格段に高まった」ことを意味します。
今回の改正で最も注目すべき変化のひとつが、「オンライン診療受診施設」という新たな施設区分の創設です。
これまで、不特定多数の人を対象にオンライン診療を受けさせる場所を設ける場合、原則として診療所としての開設許可が必要でした。医師常駐などの要件が伴うため、医療機関以外の事業者が気軽に設置できるものではありませんでした。
🏥 大きな変更点
診療所の開設許可(医師常駐等)が不要になりました。届出のみで、日常に密着した場所へ設置できます。
設置場所の例として挙げられているのは以下のような場所です。
交通の便が良い場所や、高齢者が日常的に訪れる施設に窓口が設けられることで、医療へのアクセスが大幅に向上することが期待されています。
清潔で安全な空間であること
外部から隔離された、プライバシーが保たれる空間であること(診察内容が他者に聞こえないなど)
適切な情報セキュリティ措置が講じられていること
オープンスペースや雑然とした環境では認められません。プライバシーと安全性が確保されたブース型の空間が基本となります。
💡 D to P with N とは
受診施設に看護師が同席する形態のこと。医師の指示のもとで採血・注射・エコー検査等の処置も可能になり、より質の高い医療提供が実現します。ただし医療廃棄物の処理など、関連する遵守事項への注意が必要です。
法律上、設置者に医療従事者であることなどの要件は設けられていません。幅広い主体が参入可能です。
営利法人の参入が認められたことは、民間企業による多様なサービス展開を可能にするものであり、医療×ビジネスの新しい領域が生まれる契機にもなります。
⚠️ 注意事項
保険薬局の内部への設置は原則として禁止されています。医薬分業の観点や、特定の薬局への患者誘導を防止するためです。離島やへき地などの一部例外はありますが、基本的には薬局内への設置はできないと理解しておきましょう。
施設を設置・運営する事業者は「場所を提供する」役割に徹することが重要です。診療行為そのものは、連携する医療機関の医師が実施し責任を負います。また、医療機関の管理者には、受診施設が清潔・安全でプライバシーが確保されているかを自ら確認する義務があります。
「届出のみで設置できる」と聞くと手軽に感じるかもしれませんが、届出は義務であり、怠ると罰則の対象になります。
勤務する医師等がオンライン診療を行う場合、既存の開設届の事項に追加して都道府県知事等への届出が必要です。
📋 届出事項(設置後10日以内)
設置場所
建物の構造・平面図
運営責任者の情報
その他必要事項
2026年4月1日
改正医療法 施行
オンライン診療基準が省令として法的拘束力を持つ
2026年4月〜
既存医療機関の届出猶予期間
施行時点でオンライン診療を実施中の医療機関は、事務負担を考慮して届出が猶予される
2027年3月末
経過措置終了・届出期限
既存医療機関はこの期日までに必ず届出を完了させること。新規参入施設に猶予はない
法制化に伴い、不適切な運営に対する行政の対応力が格段に強化されました。
🔍 是正命令と立入検査
⚖️ 罰則
| 違反内容 | 罰則 |
|---|---|
| 届出義務に違反 | 罰金(20万円以下等) |
| 是正命令に従わない | 拘禁刑(懲役刑) |
| 悪質な違反 | 刑事罰の適用 |
📢 広告規制
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 根拠 | 厚労省指針(行政指導) | 省令(法的拘束力あり) |
| 監督 | 事実上困難 | 是正命令・立入検査が可能 |
| 罰則 | なし | 罰金・拘禁刑 |
| 施設設置 | 診療所開設許可が必要 | 届出のみで設置可能 |
| 設置主体 | 医療機関が中心 | 株式会社等の営利法人も可 |
| 広告 | 規制が曖昧 | 医療広告規制が明確に適用 |
医療機関や事業者が今回の改正に対応するうえで、確認すべきポイントをまとめます。
法制化の意味を正しく理解する
オンライン診療基準は「省令」として法的拘束力を持ちます。「指針に従えばOK」という感覚から切り替え、省令遵守を前提とした運用体制を整えましょう。
届出の期限と手続きを確認する
新たに受診施設を設置する場合は設置後10日以内に届出。既存の医療機関は2027年3月末までに届出を完了させる必要があります。都道府県の窓口に早めに相談しましょう。
設置者・運営主体の役割を明確にする
株式会社等も参入可能ですが、「場所の提供」と「診療行為」は明確に分離が必要です。連携医療機関との契約・責任分担を整理しましょう。保険薬局内への設置は原則禁止です。
施設の環境基準を満たしているか確認する
プライバシー保護・清潔・安全・情報セキュリティの4点が必須要件です。既存施設を転用する場合も、これらの基準を慎重に確認しましょう。
広告・表示内容を見直す
施設が「医療を提供するものではない」旨の明示が求められます。ウェブサイト・看板・チラシ等の広告表示が医療広告規制に準拠しているか、専門家とともに点検しましょう。
令和8年4月の改正医療法は、オンライン診療を「例外的な措置」から「社会インフラの一部」へと昇格させる、歴史的な転換点といえます。
医療へのアクセスを改善し、地方や高齢者が医療を受けやすくする可能性を秘めている一方で、法的拘束力の強化により、ルールを守らない場合のリスクも格段に高まっています。
参入を検討している事業者や、すでにオンライン診療を実施している医療機関は、ぜひ本記事のチェックリストを参考に、早めの対応を進めてください。
※ 本記事は公開時点の情報に基づいています。法令の解釈や手続きの詳細については、都道府県の担当窓口または専門の法務・医療コンサルタントにご確認ください。
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