この記事でわかること
令和8年度の介護保険制度改正は、介護報酬の見直しだけではありません。 介護情報基盤、要介護認定のデジタル化、ICT活用を前提とした加算要件など、 介護事業所の運営そのものを変える内容が含まれています。
介護情報基盤
要介護認定情報、LIFE、ケアプラン、介護レセプトなどの共有が進みます。
要介護認定DX
主治医意見書や認定調査のオンライン化により、手続き短縮が期待されます。
事業所の準備
ICT環境、助成金、職員教育、利用者説明を早めに整える必要があります。
介護現場はアナログからデジタルへ本格移行する
日本の介護現場は、いま大きな転換点を迎えています。
2026年度、令和8年度の介護保険制度改正は、単なる介護報酬の見直しにとどまりません。 介護情報基盤の始動、要介護認定手続きのデジタル化、処遇改善加算の再編、 マイナンバーカード活用、ICT導入の加速など、介護事業所の運営そのものを変える内容が含まれています。
これまで介護現場では、紙の書類、電話、FAX、郵送、手入力、二重入力といったアナログ業務が多く残ってきました。 現場職員の負担は大きく、ケアマネジャー、訪問看護、介護施設、自治体、医療機関の間で情報が分断されることも少なくありませんでした。
2040年に向けて、日本の介護需要はさらに高まります。 85歳以上人口が増え、医療と介護の両方を必要とする高齢者が増加する一方で、現役世代は減少していきます。
介護職員、看護師、ケアマネジャー、事務職員など、介護を支える人材の確保はますます難しくなります。 この状況の中で介護サービスを持続可能にしていくためには、これまでのやり方を続けるだけでは限界があります。
令和8年度の期中改定が意味するもの
通常、介護報酬改定は3年ごとに行われます。 しかし、令和8年度は、令和9年度の本改定を待たずに期中改定が実施されます。
これは、介護現場の人材不足、物価高騰、食材料費の上昇、現場の疲弊が、待ったなしの状況になっていることを示しています。
| 項目 | 内容 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 全体改定率 | プラス2.03% | 報酬増だけでなく、ICT活用や制度対応も同時に求められます。 |
| 処遇改善分 | プラス1.95% | 賃上げと生産性向上の取り組みがセットで見られます。 |
| 食費基準費用額 | プラス0.09%相当 | 利用者・家族への事前説明が重要です。 |
| 施行時期 | 処遇改善は2026年6月、食費見直しは2026年8月 | 年度途中に複数の変更が発生するため、管理者の準備が必要です。 |
介護事業所にとって重要なのは、今回の改定を単なる報酬増として捉えないことです。 処遇改善、ICT活用、生産性向上、情報連携、補足給付の見直しが同時に進みます。
介護情報基盤が変える医療・介護連携
今回の大きな柱の一つが、介護情報基盤です。
介護情報基盤とは、これまで自治体、介護事業所、医療機関、ケアマネジャーなどの間で分散していた介護関連情報を、 利用者本人の同意を前提に、電子的に共有できるようにする仕組みです。
医療分野では、全国医療情報プラットフォーム、オンライン資格確認、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービスなどの整備が進んでいます。 介護情報基盤は、その介護版ともいえる重要なインフラです。
介護情報基盤で共有が進む主な情報
要介護認定情報
認定調査票や主治医意見書などが、関係者間で確認しやすくなります。
LIFE情報
科学的介護情報システムのデータを活用し、ケアの質向上につなげます。
ケアプラン
居宅・施設サービスの計画を共有し、支援の一貫性を高めます。
介護レセプト情報
給付管理や請求情報の把握が進み、情報連携がしやすくなります。
住宅改修・福祉用具情報
過去の利用履歴を可視化し、重複や確認漏れを防ぎやすくします。
医療・介護連携情報
退院後支援、訪問看護、ケアマネジメントの質向上が期待されます。
たとえば、入院中の高齢者について、ケアマネジャーが主治医意見書や認定情報を早期に確認できれば、 退院後のケアプランをより正確に作成できます。
訪問看護、訪問介護、通所介護、施設サービス、医療機関が同じ情報をもとに支援できれば、 利用者にとって一貫性のあるケアが提供しやすくなります。
介護情報基盤の本質は、単なるデータベース化ではありません。 医療と介護の情報の断絶を減らし、利用者を中心にした支援体制をつくることにあります。
要介護認定のデジタル化が進む
介護現場で長く課題となってきたものの一つが、要介護認定手続きです。
現在の要介護認定では、申請、認定調査、主治医意見書、審査会、結果通知といった複数の工程があります。 その過程で、紙の書類、郵送、FAX、電話確認が多く使われており、申請から認定まで1か月以上かかることも珍しくありません。
厚生労働省は、2028年度までに要介護認定手続きのデジタル化を進める方針を示しています。 特に重要なのは、主治医意見書や認定調査結果のやり取りをオンライン化することです。
要介護認定オンライン化のイメージ
医師が作成した主治医意見書がオンラインで自治体に提出され、認定調査の結果も電子的に共有されるようになれば、 郵送にかかる時間を短縮できます。
これは利用者や家族にとって大きな意味を持ちます。 介護サービスを早く利用したいのに、認定結果が出るまで待たなければならない。 退院が迫っているのに、介護サービスの調整が間に合わない。 家族が申請状況を把握できず、不安を抱える。 こうした課題を減らすためにも、要介護認定のオンライン化は重要です。
処遇改善加算の再編とICT活用
令和8年6月から施行される新しい処遇改善加算では、介護職員等の賃上げだけでなく、 生産性向上や協働化の取り組みが重要な要件になります。
これまで処遇改善加算は、主に介護職員の賃金改善を目的とした制度として認識されてきました。 しかし、今後は単に賃金を上げるだけではなく、業務の効率化、ICT活用、記録業務の見直し、 ケアプランデータ連携、LIFE活用などが、事業所運営の重要な評価項目になっていきます。
| サービス区分 | 主な変更点 | 確認すべきこと |
|---|---|---|
| 居宅介護支援 | 処遇改善加算の新設が予定されています。 | ケアプランデータ連携システムへの対応状況を確認します。 |
| 訪問看護 | 処遇改善加算の対象拡大が予定されています。 | 記録システム、ICT端末、情報共有体制を確認します。 |
| 訪問リハビリ | 新たな処遇改善評価が見込まれています。 | 医療・介護連携に必要なデータ管理体制を整えます。 |
| 施設系サービス | 生産性向上推進体制加算との関係が重要になります。 | 見守り機器、記録システム、業務改善の実績管理を確認します。 |
処遇改善加算は、今後、賃金改善と生産性向上がセットで見られる制度へ変わっていきます。 早めにICT環境と実績管理の仕組みを確認しておくことが重要です。
マイナンバーカードと介護保険証のペーパーレス化
介護情報基盤の整備に伴い、介護保険証や負担割合証などのペーパーレス化も大きなテーマになります。
現在、介護保険証は65歳到達時などに自治体から送付されます。 また、負担割合証、負担限度額認定証など、利用者が複数の証書を管理しなければならない場面もあります。
高齢者本人にとっても、家族にとっても、どの証書をどこに保管しているのか、 どのサービス利用時に何を提示するのかは分かりにくいものです。
将来的には、介護保険証の機能をマイナンバーカードに一体化し、ペーパーレス化を進める議論が加速しています。 事業所側にも、カードリーダー導入、本人確認の運用、情報セキュリティ対策、職員教育などの準備が必要です。
訪問・通所・短期滞在系
カードリーダー導入について、3台まで、上限6.4万円の補助が予定されています。
居住・入所系
カードリーダー導入について、2台まで、上限5.5万円の補助が予定されています。
補足給付の見直しと利用者説明
令和8年度改正では、DXや処遇改善だけでなく、利用者負担に関わる見直しも行われます。
2026年8月から、施設入所者等の食費・居住費に関する基準費用額が見直されます。 食費の基準費用額は、1日あたり1,445円から1,545円へ、100円引き上げられる予定です。
また、低所得者向けの補足給付についても、第3段階①の利用者は日額30円、 第3段階②の利用者は日額60円の負担増となる見込みです。
食費の負担が増えた場合、家族から見ると、施設が独自に値上げしたように受け止められる可能性があります。 ケアマネジャーや管理者は、制度改正による変更であることを事前に説明しておくことが重要です。
特に、低所得者への補足給付は、利用者本人や家族の生活に直接関わります。 突然の請求額変更として伝えるのではなく、制度改正の背景、変更額、開始時期、施設側の対応を丁寧に説明する必要があります。
2040年を見据えた地域包括ケアシステムの深化
今回の介護保険制度改正の背景には、2040年問題があります。
2040年に向けて、85歳以上人口は増加し、医療と介護の両方を必要とする高齢者が増えていきます。 一方で、現役世代は減少します。
つまり、介護サービスを必要とする人は増える一方で、それを支える人は減っていくという構造です。
この状況で介護サービスを維持するためには、地域包括ケアシステムをさらに深めていく必要があります。 医療機関、介護事業所、訪問看護、薬局、自治体、地域包括支援センター、ケアマネジャー、家族が、 より密に連携することが求められます。
医療と介護の境界線が薄くなる時代へ
これからの介護は、介護事業所だけで完結するものではありません。
高齢者の多くは、慢性疾患を抱えながら生活しています。 心不全、糖尿病、認知症、脳血管疾患、骨折後のリハビリ、フレイル、在宅酸素、服薬管理など、 医療と介護が重なり合うケースは今後さらに増えていきます。
そのため、医療と介護の情報連携はますます重要になります。
- 退院時の情報がケアマネジャーに早く届く
- 主治医意見書や認定情報が共有される
- 訪問看護や介護サービスの実績が医療側にも伝わる
- LIFE情報をもとにケアの質を見直す
- 利用者が医療と介護の間で迷子になりにくくなる
365メディカルでは、医療機関だけでなく、介護事業所、訪問看護、薬局、地域包括ケアに関わる事業者にとっても、 制度対応とDX対応が重要になると考えています。
令和8年度改正で事業所が今すぐ確認すべきこと
令和8年度の制度改正は、準備を後回しにすると、現場負担が一気に増える可能性があります。 特に、次の3つは早めに確認しておくべきです。
-
ICT環境の再点検
介護情報基盤、ケアプランデータ連携システム、LIFE、マイナンバーカード対応に備え、 インターネット環境、端末、介護ソフト、セキュリティ体制を確認します。 -
助成金・補助金の活用
カードリーダー導入、システム改修、ICT機器導入などに活用できる支援策を確認し、 申請期限、対象経費、必要書類、導入期限を整理します。 -
職員の意識改革
DXを単なる紙の置き換えにせず、ケアの質向上、記録業務の削減、医療・介護連携の改善につなげる視点を共有します。
365メディカルが考える介護DXの本質
365メディカルは、介護DXを単なるシステム導入とは考えていません。
重要なのは、制度対応、情報管理、業務改善、職員負担軽減、医療・介護連携を一体で進めることです。
介護情報基盤が始まる。要介護認定がオンライン化される。処遇改善加算にICT活用が組み込まれる。 マイナンバーカード対応が進む。LIFEやケアプランデータ連携が重要になる。
これらは別々の制度に見えますが、すべて2040年に向けた介護提供体制の再設計につながっています。
人が足りない時代に、どうやって介護を続けるのか。 医療と介護の情報をどうつなぐのか。 現場職員の負担をどう減らすのか。 その問いに向き合うことが、これからの介護事業所経営に求められます。
まとめ
令和8年度の介護保険制度改正は、日本の介護がアナログからデジタルへ本格的に移行するための重要な節目です。
- 期中改定による処遇改善
- 介護情報基盤の整備
- 要介護認定のデジタル化
- ICT活用を前提とした加算要件
- マイナンバーカード対応
- 補足給付の見直し
- 地域包括ケアシステムの深化
これらはすべて、2040年に向けて介護を持続可能にするための取り組みです。
介護事業所に求められるのは、制度改正を受け身で待つことではありません。 自事業所の業務フローを見直し、ICT環境を整備し、職員と情報を共有し、利用者や家族に丁寧に説明することです。
介護DXは、避けて通れない流れです。 しかし、それは現場を置き去りにするものではなく、現場を守るために活用すべきものです。
365メディカルは、医療・介護事業所の制度対応とDXを支援します
365メディカルでは、医療機関、介護事業所、訪問看護、薬局など、 地域医療と地域介護を支える事業者の制度対応、情報管理、WEB掲載、施設基準管理、 DX対応、バックオフィス整備を支援しています。
令和8年度改正、介護情報基盤、介護DXへの対応は、早めの準備が重要です。
365メディカルを見る引用・参考資料
- note「2026年8月補足給付見直し 居宅管理者が今やるべきこと」
- 日本経済新聞「介護認定をデジタル化 28年度までに」
- 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」
- 株式会社CBヘルスケア「2026年4月施行予定 介護情報基盤とは?」
- 厚生労働省「介護情報基盤について」
- 居宅介護支援事業所すずみな「介護保険最新情報Vol.1474解説」
- 介護のコミミ「令和8年度介護報酬改定 期中改定まとめ」
- 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について 社保審資料」
- 厚生労働省「介護保険最新情報 Vol.1485」
- 厚生労働省「介護保険最新情報 Vol.1488」
- 京都私立病院協会「令和8年度介護報酬改定について」
免責事項
本記事の内容は、2026年6月時点での公表資料および報道に基づいた一般的な情報提供を目的としています。 実際の制度施行にあたっては、各自治体の条例、厚生労働省から発出される最新の通知、 介護保険最新情報、告示、疑義解釈等を必ずご確認ください。
本記事は、特定の介護報酬算定、加算取得、経営判断、法的判断を保証するものではありません。 個別の対応については、自治体、地方厚生局、顧問税理士、社会保険労務士、行政書士、弁護士、 介護経営コンサルタント等の専門家にご確認ください。
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