医療機関の情報発信は、いまや単なる集客手段ではありません。
ウェブサイト、Instagram、YouTube、Googleマップ、予約サイト、 広告用ランディングページなど、患者が医療機関を選ぶ際に接触する情報は増え続けています。
一方で、発信媒体が増えるほど、医療機関側の確認・更新・証憑管理の負担も大きくなっています。 「制作会社に任せているから大丈夫」「広告審査を通っているから問題ない」 という認識だけでは、医療広告上のリスクを十分に管理できません。
あなたのクリニックのサイトは、本当に適切ですか?
美容医療、歯科、自由診療を中心に、ウェブサイトやSNSを活用した情報発信は急速に拡大しています。 一方で、医療広告規制も、ホームページ、SNS、動画、広告バナー、 オンライン診療に関係する新たな施設形態まで視野に入れた内容へと変化しています。
医療広告規制において重要なのは、単に虚偽を書かないことではありません。 事実であっても、患者に誤解や過度な期待を与える表現は認められない場合があります。
また、医療広告対応は、広告文の表現だけを直せば終わるものではありません。 掲載している料金、医師の在籍状況、設備、症例写真、患者同意、 提携先、診療体制などが、実際の運用と一致していることが求められます。
1.事実であっても「No.1」は掲載できないことがある
1比較優良広告は、事実かどうかだけでは判断されません
「地域No.1の症例数」「県内最大級」「日本一低価格」 「患者満足度98%」「口コミランキング第1位」。
一般の商品やサービスでは強い訴求になる表現ですが、医療広告では、 他の病院や診療所と比較して自院が優良であると示す 比較優良広告に該当する可能性があります。
医療広告で特に注意したいのは、客観的な調査結果や実績に基づく表現であっても、 認められるとは限らない点です。
医療は、患者の身体、生命、健康に直接関わります。 順位や印象だけで医療機関を選択すると、患者が自分に適した治療を選ぶ機会を 損なう可能性があるためです。
著名人の来院アピールにも注意
次のような表現も、患者に「著名人が利用するほど優れた医療機関である」 という印象を与える可能性があります。
- 芸能人の〇〇さんも来院
- 多くのモデルが通うクリニック
- プロスポーツ選手から選ばれています
- インフルエンサーも愛用する治療
例えば、次のような情報です。
- 対応している疾患や症状
- 診療を担当する医師の経歴や資格
- 治療の流れ
- 診療時間や予約方法
- 導入している設備
- 院内感染対策
- 説明・同意の手順
- 緊急時の対応体制
- 他の医療機関との連携体制
ただし、「〇〇専門」「専門外来」という表現についても、 標榜可能な内容や資格制度との整合性を確認する必要があります。 「No.1」を「専門」に置き換えるだけでは、十分な対策にはなりません。
2.患者から寄せられた体験談でも、掲載方法によっては違反になる
2善意の口コミでも、広告として掲載すれば注意が必要です
一般の商品やサービスでは、利用者の口コミや体験談は重要な判断材料です。 しかし、医療機関が広告として、患者の主観に基づく治療内容や治療効果の体験談を 掲載することは認められていません。
例えば、次のような内容です。
- 1回の治療で痛みがなくなりました
- 長年悩んでいた症状が改善しました
- 以前より10歳若く見られるようになりました
- 先生のおかげで必ず治ると思えました
患者から自発的に寄せられた内容であっても、 医療機関が自院のウェブサイトやSNSに選んで掲載すれば、 患者を誘引する広告として扱われる可能性があります。
「個人の感想です」「効果には個人差があります」と注記しても、 体験談自体の掲載が認められるわけではありません。
なぜ口コミが厳しく制限されるのか
医療の効果は、患者の年齢、体質、症状、既往歴、治療内容などによって異なります。 一人の患者の感想を見た別の患者が、 自分にも同じ結果が得られると誤認する可能性があるためです。
- 初診から治療までの流れ
- カウンセリングで説明する事項
- 検査の内容
- 治療法を選択する基準
- 説明と同意の手順
- 治療後のフォロー体制
- 合併症や副作用が生じた場合の対応
- キャンセルや解約に関する取扱い
3.ビフォーアフター写真は、写真そのものより「説明不足」が問題になる
3症例写真は全面禁止ではありません
ビフォーアフター写真は、掲載媒体、掲載方法、併記する説明によって 取扱いが変わります。
治療前後の写真だけを大きく掲載し、 「たった1回でここまで変わる」「誰でも理想の輪郭に」 「確実に若返る」などと示す広告は、 治療効果を誤認させる可能性があります。
限定解除で求められる主な情報
- 患者が自ら求めて閲覧するウェブサイトなどであること
- 問い合わせ先が明示されていること
- 自由診療の治療内容と費用が明示されていること
- 自由診療に伴う主なリスクや副作用が明示されていること
個別の症例写真に必要となる情報
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 治療内容 | どのような施術・治療を実施したか |
| 治療期間 | 通常必要とされる期間を記載しているか |
| 治療回数 | 何回実施した症例なのか |
| 費用 | 通常必要となる費用や金額の範囲が分かるか |
| 主なリスク | 治療に伴う主なリスクが明記されているか |
| 副作用 | 起こり得る副作用が患者に分かる表現か |
情報を写真から離れたページに一括掲載するだけでは、 患者が容易に確認できないと判断される可能性があります。
また、リスティング広告の広告文、ディスプレイ広告、SNSの広告枠、 チラシ、看板などでは、限定解除の考え方をそのまま適用できません。
- 患者から写真掲載の同意を得ているか
- 個人を特定できる情報が残っていないか
- 治療内容と写真が一致しているか
- 掲載料金が現在の料金表と一致しているか
- 治療回数や期間が正確か
- リスク・副作用が省略されていないか
- 掲載期限を設定しているか
- 料金改定後に古い表示が残っていないか
4.オンライン診療受診施設は、施設側の名称や表示にも注意が必要
4医療を直接提供しない施設でも、広告規制の対象になり得ます
オンライン診療受診施設とは、患者がオンライン診療を受けるために利用する、 医療機関とは別の場所に設けられた施設です。
例えば、次のような施設が想定されます。
- 商業施設内のオンライン診療ブース
- 企業の事業所内に設置する受診スペース
- 薬局などに併設する個室
- 地域施設内のオンライン診療用スペース
- 美容サロンなどに設ける受診用個室
オンライン診療受診施設そのものが医療機関ではなくても、 名称や表示、ウェブサイトなどに誘引性と特定性があれば、 医療広告規制の対象となる可能性があります。
例えば、次のような表現には注意が必要です。
- 〇〇メディカルセンター
- 〇〇オンラインクリニック受付
- 医師がいつでも対応
- その場で診断・治療が完結
- 当施設の医師が診察します
患者に明確に伝えるべき情報
- どの医療機関の医師が診療するのか
- 施設に医師や看護師が常駐しているのか
- 施設運営者と医療機関が同一なのか
- 診療契約は誰との間で成立するのか
- 費用は誰に支払うのか
- 緊急時にはどこが対応するのか
ウェブサイトには正しい説明があっても、 現場スタッフが「ここで診察します」「当施設の医師です」と説明すれば、 患者に誤解を与える可能性があります。
新しい医療提供モデルほど、広告、契約、掲示、説明、記録、 責任分界を一体的に設計することが重要です。
5.広告媒体の審査を通っても、医療広告上適法とは限らない
5広告審査の通過は「合法」の証明ではありません
Google、Meta、YouTube、予約ポータルサイトなどには、 それぞれ独自の広告掲載基準があります。
しかし、媒体の審査を通過したことは、 医療法や医療広告ガイドラインへの適合を保証するものではありません。
次のような事情だけで、広告が適法になるわけではありません。
- 広告審査を通過した
- 制作会社が問題ないと言った
- 広告代理店が確認した
- 競合医院も同じ表現を掲載している
- SNS上で削除されていない
医療機関ネットパトロールと行政対応
厚生労働省委託の医療機関ネットパトロールでは、 医療機関のウェブサイトなどにおける不適切な医療広告について、 情報収集や通報受付が行われています。
問題が確認された場合には、行政による確認や指導が行われ、 必要に応じて報告命令、立入検査、是正命令などに進む可能性があります。
医療広告違反による経営上の影響は、罰則だけではありません。
- 患者からの信用低下
- SNSでの批判や拡散
- 広告停止による集客への影響
- ウェブサイトや広告の全面修正
- 行政対応に伴う業務負担
- 制作会社や代理店との契約トラブル
- 院内職員への説明負担
医療広告対策は「禁止表現を消す作業」ではない
医療広告ガイドラインというと、 「No.1と書かない」「必ず治ると書かない」 「口コミを掲載しない」といった、 表現上のチェックに目が向きがちです。
しかし、本質的な課題は、 医療機関の発信内容と実際の医療提供体制が一致しているかどうかです。
- 掲載している医師が現在も在籍しているか
- 表示料金と窓口で説明する料金が一致しているか
- 自由診療のリスクが適切に説明されているか
- 症例写真の同意書を保管しているか
- 広告掲載設備が実際に使用できる状態か
- オンライン診療の実施主体が明確か
- 提携先や委託先との責任分界が整理されているか
365メディカルが考える管理の8項目
- 掲載媒体を一覧化する
- 掲載内容の責任者を決める
- 公開前の確認手順を定める
- 広告表現の根拠資料を保管する
- 料金・人員・設備変更時の更新ルールを作る
- 定期的に掲載内容を点検する
- 修正履歴を残す
- 制作会社や広告代理店との責任分界を明確にする
医療広告対応は、広報担当者だけの業務ではありません。 院長、事務長、医師、看護師、受付、広報担当、 制作会社、広告代理店などが関係する、 医療機関全体の管理課題です。
信頼を築くための「クリーンな情報発信」へ
医療広告ガイドラインは、医療機関の表現を縛るだけの規制ではありません。 患者が治療内容、費用、リスク、担当者、緊急時の対応などを理解し、 自分に合った医療を選ぶための環境を整えるルールです。
透明性の高い情報発信は、短期的な広告効果だけを狙った表現よりも、 長期的には医療機関の信用と持続的な経営につながります。
この情報は、患者が自分に必要な医療を正しく理解し、 安心して選択するための助けになっているか。
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365メディカルでは、医療機関のウェブサイト、SNS、施設基準、 WEB掲示、証憑、更新履歴などを、 継続的に管理するための仕組みづくりを支援しています。
365メディカルへ相談する引用・参照
- 厚生労働省 「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針 (医療広告等ガイドライン)」
- 厚生労働省 「医療広告等ガイドラインに関するQ&A」
- 厚生労働省 「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書 第6版」
- 厚生労働省 「オンライン診療に関する広告等について」
- 厚生労働省委託事業 「医療機関ネットパトロール」
- 厚生労働省 「医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会」関係資料
用語集
- 医療広告
- 患者の受診を誘引する意図があり、病院・診療所や医師などを 特定できる情報です。ウェブサイトやSNSも条件によって該当します。
- 比較優良広告
- 他の医療機関と比較し、自院が優良であると示す広告です。 「No.1」「最高」「日本一」などが代表例です。
- 誇大広告
- 必ずしも虚偽ではないものの、実際より著しく優れていると 患者に誤認させる広告です。
- 限定解除
- 患者が自ら求めて閲覧するウェブサイトなどで、 問い合わせ先、費用、リスク・副作用などの要件を満たすことにより、 通常は広告できない事項を掲載できる仕組みです。
- オンライン診療受診施設
- 患者が医療機関外の場所からオンライン診療を受けるために利用する施設です。 名称、広告、公表事項などについてもルールがあります。
- 医療機関ネットパトロール
- 医療機関のウェブサイトなどにおける不適切な医療広告を確認し、 通報を受け付ける厚生労働省委託事業です。
- 証憑管理
- 広告表現の根拠資料、患者同意書、料金表、症例情報、 掲載履歴などを後から確認できる形で保管・管理することです。
本記事は、2026年7月時点で公表されている法令、通知、 ガイドラインおよび行政資料を基に、一般的な情報を提供するものです。
個別の広告表現や医療機関の運用が法令に適合するかどうかは、 掲載媒体、表現内容、治療内容、施設形態、 地域の行政運用などによって判断が異なる場合があります。
本記事は、法的助言、行政上の適法性の保証、 診療報酬上の判断を提供するものではありません。 実際の広告掲載やサービス開始に当たっては、 所管の保健所、都道府県、地方厚生局、弁護士その他の専門家にご確認ください。