365 MEDICAL|医療制度・医療DX

2026年、日本の医療はどう変わる?
現場から見えた「5つの新常識」

医療DX、遠隔宿直、画像読影AI、D to P with N、アウトカム評価。制度改正の表面だけでは見えにくい、医療提供体制の構造変化を経営と運用の視点から解説します。

一般社団法人365メディカル医療DX・医療経営最終確認:2026年7月

この記事のポイント

2026年の医療制度改革は、診療報酬の点数変更だけではありません。国は、人口減少と医療従事者不足を前提に、医療情報、人材配置、診療行為、病院機能を再設計しようとしています。

本記事では、確定した制度と検討中の施策を区別しながら、医療機関が今から確認すべき実務を整理します。

医療制度の「見えない転換点」に立つ私たち

点数改定の先で、医療現場の仕組みそのものが変わり始めています。

医療経営者や現場のリーダーにとって、診療報酬改定への対応は複雑なパズルです。施設基準の確認、届出、電子カルテやレセプトコンピューターの更新、職員への周知など、多くの実務が発生します。

しかし、令和8年度診療報酬改定を含む2026年前後の制度改革は、単なる点数の増減にとどまりません。政府が進めているのは、人口減少、医療従事者不足、地域偏在を前提とした医療提供体制の再構築です。

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医療DXは「導入するかどうか」ではなく、診療の前提になる

電子化から、医療情報を安全につなぐ基盤づくりへ。

2024年12月2日に従来の健康保険証の新規発行が終了し、資格確認はマイナ保険証を中心とした仕組みに移行しました。ただし、資格確認書による確認手段も残されています。

より大きな変化は、医療機関、薬局、自治体、介護事業所などを情報でつなぐ全国医療情報プラットフォームの整備です。電子カルテ情報共有サービスでは、診療情報提供書、健診結果、傷病名、アレルギー、感染症、薬剤禁忌、検査情報などを標準的な形式で共有することが想定されています。

診療報酬改定DXが医事業務を変える

共通算定モジュールは、診療報酬の算定ロジックを標準化し、ベンダーごとの重複開発や医療機関の更新負担を軽減する構想です。実装範囲や時期は段階的に整理されるため、すべての医事業務が直ちに自動化されるわけではありません。

経営上の重要ポイント
電子カルテは診療録の保存装置から、地域連携、診療報酬請求、オンライン診療、AI活用、経営分析、サイバーセキュリティを支える基盤へ変化しています。
  • 標準規格と電子カルテ情報共有サービスへの対応
  • 外部システムとの連携方法
  • 診療情報の出力・移行・返還方法
  • 利用者認証、操作ログ、修正履歴
  • バックアップと障害時復旧
  • 医療機関とベンダーの責任分界
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医師が院内にいることを前提とした宿直体制が見直される

ICTを用いた遠隔対応は、宿直の無条件な廃止ではありません。

病院における医師の宿直は医療法第16条に基づく重要な管理体制です。一方、地域病院や慢性期病院では宿直医確保が大きな負担となっています。

規制改革の議論では、患者の急変時に医師が速やかに診療できる体制を確保することを前提に、オンラインを含む情報通信機器を利用した対応の位置付けが検討されています。

注意
すべての病院が医師を院外に置き、遠隔対応だけで宿直義務を満たせる制度になったわけではありません。病院機能、患者の状態、緊急時対応、行政との確認が必要です。
  • 夜間に発生する症例と急変リスクの分析
  • 安全な電子カルテ閲覧環境
  • 映像・音声・医療機器による状態確認
  • 看護師等への指示系統
  • 駆けつけ、救急搬送、転院の基準
  • 通信障害時の代替手段
  • 遠隔指示と対応内容の記録
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AIは「医師の代わり」ではなく、診断の品質を支える存在になる

二重読影の代替可能性は検証段階。最終判断と管理責任は残ります。

マンモグラフィや胸部X線検査などでは、検診精度を確保するため複数の医師による読影が行われます。一方、専門医の地域偏在により二重読影体制の維持が難しい地域もあります。

規制改革の場では、医師2人による読影と、読影支援AIを用いた医師1人による読影の感度・特異度などを比較し、安全性と実用性を検証する方向が示されています。

AIが「2人目の医師」として正式に認められたわけではありません。
対象検査、精度、安全性、責任の所在、性能評価、運用方法などを検討している段階です。

生成AIによるカルテ作成にも注意

診療録の記載義務を負うのは診療を行った医師です。AIが作成した文章を保存する前に、医師が内容を確認し、作成者、修正履歴、操作ログを管理する必要があります。

  • 症状や患部の左右の取り違え
  • 否定表現の誤認
  • 薬剤名、用量、投与方法の誤記
  • 患者発言と医師所見の混同
  • 実施していない診察や検査の記載
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医療と介護の境界が動き、現場で完結できる行為が増える

タスク・シフトは、行為の移転ではなく責任と連携の再設計です。

医師、看護師、介護職員、薬剤師などの役割分担を見直すタスク・シフト/シェアが進められています。介護職員による食道ろうの経管栄養も、研修、安全管理、医師・看護師との連携を前提に検討されています。

D to P with Nによるオンライン診療

患者側に看護師が同席し、医師の遠隔指示に基づいて診療を補助することで、診察、検査、処置を連続して行える可能性があります。

  1. 患者がオンライン診療受診施設や専用車両を利用する
  2. 看護師が本人確認、問診補助、バイタル測定を行う
  3. 遠隔地の医師がオンラインで診察する
  4. 医師が必要な検査や処置を指示する
  5. 看護師が指示に基づき診療を補助する
  6. 医師が結果を確認し診断・処方を行う
  7. 診療内容を医療機関の診療録へ記載する
施設を設置すれば自由に医療行為を行えるわけではありません。
開設主体、看護師の所属、指示方法、診療録、医薬品・医療機器の管理、緊急時対応などを事前に整理する必要があります。
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診療報酬は「何日入院させたか」から「どこまで回復させたか」へ

量だけでなく、退院後の生活まで含むアウトカムが問われます。

今後の診療報酬では、平均在院日数や病床稼働率だけでなく、患者がどこまで回復し、どのような状態で地域へ戻れたかが重視されます。

在宅復帰率だけを上げればよいわけではありません。無理な退院は早期再入院、家族負担の増加、介護サービスの混乱につながります。

  • 食事、嚥下、栄養状態
  • 排泄、移動、転倒リスク
  • 服薬管理
  • 認知機能と精神状態
  • 家族の支援体制
  • 訪問診療、訪問看護、介護サービスとの連携
  • 住宅環境と経済的課題

病院の価値は、保有する病床数だけでは決まりません。地域の患者をどこから受け入れ、どのような状態まで回復させ、どこへつなぐことができるか。その流れを設計できる医療機関が重要になります。

2026年、医療機関が確認すべき5つの領域

医療情報の安全管理

  • システム構成図
  • クラウドサービス一覧
  • 権限、ログ、バックアップ
  • 委託先との責任分界

施設基準・診療報酬

  • 届出と実運用の一致
  • 人員配置基準
  • 院内・WEB掲示
  • 研修記録と証憑

オンライン診療

  • 医師と患者の所在
  • 看護師等の所属と役割
  • 緊急時対応
  • 診療録と個人情報管理

AI利用

  • 利用サービスの把握
  • 入力情報の範囲
  • 最終確認者
  • 保存先と二次利用

地域連携・アウトカム

  • 自院が担う地域機能
  • 入退院経路
  • 退院後の生活継続
  • 再入院と在宅復帰の分析

問われているのは「何のためのDXか」

限られた医療人材で、地域に必要な医療を維持するために。

医療DX、遠隔対応、AI、タスク・シフト、アウトカム評価は別々の政策に見えますが、目的は共通しています。限られた医療人材で、地域に必要な医療を維持することです。

DXで本当に見直すべきなのは、システムではなく業務の流れです。機械に任せる業務、他職種と分担する業務、医師が担う判断を整理し、そこで生まれた時間を患者への説明、対話、ケア、地域連携へ戻す必要があります。

制度対応を、現場で運用できる仕組みへ

365メディカルでは、施設基準管理、WEB掲示、証憑管理、医療情報システムの安全管理、オンライン診療体制の構築など、制度を実際の運用へ落とし込む支援を行っています。

引用・参照

  1. 厚生労働省「医療DXについて」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/iryoudx.html
  2. 厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス」
    厚生労働省 電子カルテ情報共有サービス
  3. 内閣府 規制改革推進会議「医師の宿直について」健康・医療・介護ワーキング・グループ資料
  4. 内閣府 規制改革推進会議「AIを活用したがん検診について」健康・医療・介護ワーキング・グループ資料
  5. 内閣府 規制改革推進会議「規制改革推進に関する答申」
  6. 厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」および関連資料
  7. 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定」関連資料
  8. 医療法、医療法施行規則、医師法、保健師助産師看護師法、社会福祉士及び介護福祉士法等の関係法令

参照情報の最終確認:2026年7月13日

用語集

医療DX
医療情報や業務をデジタル化し、医療の質、効率性、安全性、患者利便性を高める取組です。
全国医療情報プラットフォーム
医療、薬局、介護、自治体等の情報を安全かつ標準的に連携する国の基盤構想です。
共通算定モジュール
診療報酬の算定ロジックを共通化し、改定対応の負担軽減を目指す仕組みです。
遠隔宿直
医師が院外からICTを用いて患者状態を確認し、看護師等へ指示する宿直体制の通称です。
二重読影
検診画像などを複数の医師が確認し、見落としを減らす方法です。
D to P with N
患者側に看護師が同席し、医師の指示に基づいて診療を補助するオンライン診療の形態です。
タスク・シフト/シェア
業務を資格・能力・法令の範囲に応じて他職種へ移管または共同実施する取組です。
アウトカム評価
医療行為の量だけでなく、回復、在宅復帰、再入院、生活機能等の結果を評価する考え方です。
真正性・見読性・保存性
電子保存された医療情報に求められる三原則です。

免責事項

本記事は、公開時点で確認できる法令、行政資料、審議会・検討会資料等に基づき、医療制度と医療機関経営に関する一般的な情報を提供するものです。個別の医療行為、診療報酬算定、施設基準、許認可、届出、労務、契約、法的判断を保証するものではありません。

規制改革推進会議等で示された内容には、検討中または今後の法令・通知改正を前提とするものが含まれます。答申、検討方針、実証、ロードマップに記載された事項が、直ちに現行制度として実施できるとは限りません。

実際の運用や届出を検討する際は、最新の法令、厚生労働省通知、地方厚生局、都道府県、保健所、関係団体、専門家へ確認してください。