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2040年を見据えた新たな地域医療構想と医療機関の生存戦略
医療政策・病院経営

2040年を見据えた「新たな地域医療構想」
医療機関の生存戦略と今すぐ行うべき対応

公開日:2026年7月18日監修・編集:一般社団法人365メディカル読了目安:約12分

新たな地域医療構想は、病床数だけの議論ではありません。医療機関全体の役割、外来、在宅医療、介護連携、人材確保、医療DXまで含めて、2040年に地域で何を担うのかが問われます。

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この記事の内容

  1. 議論から実行へ移る新たな地域医療構想
  2. 病院全体の役割を示す医療機関機能
  3. 回復期から包括期へ何が変わるのか
  4. 病床稼働率を経営目標と誤解しない
  5. 医療DXと経営基盤の再設計
  6. 今から取り組むべき5つのこと
  7. まとめ

2026年、厚生労働省は、2040年とその先を見据えた新たな地域医療構想の方向性と、地域医療構想策定ガイドラインを公表しました。

これまでの地域医療構想は、主に2025年の医療需要を見据え、病床機能の分化と連携を進めることが中心でした。しかし、新たな地域医療構想が対象とするのは病床だけではありません。

外来医療、在宅医療、救急医療、介護との連携、医療人材の確保、医療DX、医療機関同士の再編・集約化まで含めた、地域の医療提供体制全体が対象になります。

各医療機関には今後、「2040年の地域で、自院はどのような役割を担うのか」を、診療実績や将来需要などのデータに基づいて明確にすることが求められます。

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1.議論から実行へ移る「新たな地域医療構想」

地域医療構想とは、都道府県が将来の人口構造や医療需要の変化を見据え、地域に必要な医療提供体制を整備するために策定するものです。

従来は、主に病床を「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」の4機能に区分し、地域ごとの必要病床数を推計してきました。

新たな地域医療構想では、従来の「回復期」が「包括期」へ変更されます。さらに、病床単位の機能だけでなく、医療機関全体が地域で担う役割を示す「医療機関機能」が新たに位置づけられます。

病床単位の説明だけでは足りなくなる

今後は、高齢者救急、重症救急、在宅支援、専門医療、周辺医療機関との分担など、病院全体として地域で果たす役割を説明できる状態が重要になります。

病床数だけを見ていては判断を誤る

今後の協議では、病床数だけでなく、救急搬送、手術、在院日数、在宅復帰、患者流出入、職員配置、建物・設備、経営状況なども重要になります。

2.病院全体の役割を示す「医療機関機能」

新たな地域医療構想では、病床機能とは別に、病院全体の役割を表す医療機関機能が設定されます。

1急性期拠点機能

重症救急、高度な手術、専門性の高い急性期医療などを集約的に担う地域の拠点機能です。

2高齢者救急・地域急性期機能

高齢者救急を受け入れ、治療、早期リハビリ、栄養・口腔管理、退院支援まで一体的に担います。

3在宅医療等連携機能

診療所、訪問看護、介護、薬局、歯科と連携し、在宅患者の急変時の後方支援も担います。

4専門等機能

特定診療科、専門医療、集中的リハビリテーション、慢性期医療など、地域内で専門性を発揮します。

① 急性期拠点機能

「急性期病床を持っている」というだけで、急性期拠点機能を担えるとは限りません。地域人口、患者流出入、救急搬送、手術実績、医師配置、設備、経営状況などを総合的に検討する必要があります。

② 高齢者救急・地域急性期機能

高齢者は複数疾患や生活上の課題を抱えることが多く、疾患を治療するだけでは自宅や介護施設へ戻れない場合があります。入院直後から、リハビリ、栄養、口腔、服薬、家族・介護事業者との調整を進める体制が重要です。

③ 在宅医療等連携機能

自院の訪問診療件数だけでなく、地域の関係機関との連絡体制、入退院支援、情報共有、夜間・休日対応、後方支援病床の運用まで具体的に設計する必要があります。

④ 専門等機能

専門性を掲げるだけでは十分ではありません。地域内の需要、近隣医療機関との重複、紹介患者の確保、人材の継続配置まで検討する必要があります。

3.「回復期」から「包括期」へ何が変わるのか

包括期には、従来の回復期リハビリテーション機能に加え、高齢者等の急性期患者を受け入れ、治療と入院早期からのリハビリテーション等を行い、早期の在宅復帰を支援する機能が含まれます。

つまり、包括期は従来の回復期を単純に名称変更したものではありません。高齢者救急の受入れから在宅復帰までを含む、より広い病床機能として考える必要があります。

リハビリテーションは病棟内の機能ではなくなる

リハビリ職には、入院中の訓練だけでなく、退院後の生活まで見据えた関与が求められます。リハビリ部門を単独部門として見るのではなく、病床運営、在院日数、在宅復帰、地域連携を支える経営インフラとして再評価する必要があります。

4.病床稼働率の数字を経営目標と誤解してはいけない

必要病床数を医療需要から換算する際に用いられる病床稼働率は、個別医療機関の経営目標として設定されたものではありません。

病床機能必要病床数算定上の病床稼働率
高度急性期75%
急性期78%
包括期90%
慢性期92%
注意:これらは地域全体の必要病床数を推計するための換算値です。ただし、地域全体で機能分化や再編が進めば、個別病院の病床数や構成に影響する可能性はあります。

病床を維持すること自体を目的にするのではなく、将来需要と人材供給を踏まえ、どの病床を、どの役割で、どの規模まで維持するのかを検討する必要があります。

5.医療DXはシステム導入ではなく経営基盤の再設計

医療DXは、電子カルテや生成AIを導入することだけではありません。地域医療構想への対応という観点では、情報共有、入退院支援、在宅連携、診療実績集計、施設基準管理、職員配置、証憑管理、経営指標の可視化まで含めて業務全体を再設計する必要があります。

DXの目的はシステムを増やすことではなく、院長や事務長などに集中している確認・集計作業を減らし、意思決定に必要な情報をすぐに取り出せる状態をつくることです。

「まだ方針が決まっていない」今が準備のタイミングです

地域の方針が固まってから着手すると、病床転換、人材採用、設備投資、連携協議の選択肢が限られる可能性があります。

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6.医療機関が今から取り組むべき5つのこと

  1. 自院の診療実績を客観的に把握する
    救急、手術、在院日数、退院先、患者流出入、職員配置などをデータ化します。
  2. 複数の経営シナリオを比較する
    急性期維持、包括期強化、在宅後方支援、専門化、病床適正化、他院連携などを比較します。
  3. 地域医療構想調整会議を交渉の場と捉える
    自院が担う役割、縮小した場合の地域への影響、強化可能な機能を説明できる状態にします。
  4. 人材戦略と機能戦略を一体化する
    採用、教育、タスクシフト、夜勤負担、DXによる業務軽減を一体で設計します。
  5. 制度対応を院長や事務長だけで抱えない
    情報収集、データ管理、経営判断、行政協議、証憑保管の責任分担を明確にします。

7.新たな地域医療構想は「病床削減の話」だけではない

本質は、地域の限られた医療資源をどのように配分し、将来にわたって医療提供体制を維持するかにあります。

自院の役割を明確にしないまま協議を迎えれば、他の医療機関や行政が描いた将来像の中で、自院の位置づけが決まってしまう可能性があります。

これから重要になるのは、病床を守ることではなく、地域で必要とされる機能を持続可能な方法で提供できることです。

8.まとめ:2040年の病院経営は、すでに始まっている

病院の機能転換、病床再編、建物更新、人材育成、地域連携体制の構築には長い時間がかかります。今、必要なのは直ちに一つの結論を出すことではなく、自院の現状を可視化し、将来の選択肢を比較できる状態をつくることです。

これらの問いに答えることが、地域医療構想への対応であり、同時に病院経営の中長期戦略になります。

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引用・参考資料

  1. 厚生労働省「2040年に向けた地域医療構想」
  2. 厚生労働省「地域医療構想策定ガイドライン」
  3. 厚生労働省「新たな地域医療構想策定ガイドラインについて」
  4. 厚生労働省「地域医療構想及び医療計画等に関する検討会」資料
  5. 厚生労働省「病床機能報告」
  6. 厚生労働省「地域別の病床機能等の見える化」

用語説明

地域医療構想
将来の人口構造や医療需要を見据え、地域の病床機能、医療機関機能、外来、在宅医療、介護連携などを含む医療提供体制を構築するため、都道府県が策定する構想です。
病床機能
病棟が担う機能を、高度急性期、急性期、包括期、慢性期の4つに区分したものです。
医療機関機能
医療機関全体が地域で担う役割を示す区分です。
包括期
高齢者等の急性期治療、早期リハビリ、栄養・口腔管理、在宅復帰支援などを包括的に担う病床機能です。
地域医療構想調整会議
医療機関、医師会、保険者、行政などが地域に必要な医療機能や役割分担を協議する会議です。
医療DX
デジタル技術や医療情報を活用し、診療情報共有、業務効率化、地域連携、経営管理などを改善する取り組みです。

免責事項

本記事は、2026年7月時点で公表されている厚生労働省資料等に基づき、医療機関経営の観点から一般的な情報を提供するものです。具体的な策定内容、報告方法、協議の進め方、対象医療機関、スケジュール等は、今後の法令、通知、都道府県の方針および構想区域ごとの協議によって変更される場合があります。病床機能の変更、医療機関機能の選択、設備投資、再編、診療報酬上の届出その他の経営判断を行う際は、最新の行政通知、都道府県資料、地域医療構想調整会議の動向等をご確認ください。
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